「おばあさん」が羨ましかった日々。
私が住む街は、東京23区の中でもっとも高齢化が進んだエリア。
つまり、道を歩けば高齢者にあたる。
昨年、病気が発覚して手術を受けるまでの間、
散歩や買い物の途上でおばあさんを見るたび、
やけに羨ましくて仕方がなかった。
もちろん、別に「孫が欲しい」という話ではなく。
人生でもっとも「死」に近づいたとき、
ひしひしと迫ってきたのが、
「私はおばあさんになれないかもしれない」
という怖れの感情だったのだ。
術後1ヵ月が経過して、ふと気づいたら
あれだけ羨ましかった「おばあさん」の姿が、
すっかり日常の中に溶け込んでしまっていた。
手術が無事終わり、病理検査の結果も出て、
とりあえず、「最悪の想定」は免れたといえるだろう。
しかし、危機感は一時より薄らいだものの、
死の気配はいつでもそばにあるような気がする。
私が「おばあさん」になれる確率はどのくらいなんだろう?
そんなとりとめもないことを考えつつ、
うるう年の今年、2月29日は行きつけのレストランを予約し、
スパークリングワインで乾杯した。
次のうるう年に、私は還暦を迎えているはず。
憧れの「おばあさん」に、いつか私はなれるんだろうか。
今週のお題「うるう年」