「58歳没はちょっと早いけど・・・」山本文緒さんの“逃病記”を読む
2021年10月にすい臓がんで亡くなった作家
山本文緒さんの「無人島のふたり~120日以上生きなくちゃ日記」
「58歳没はちょっと早いけど、短い生涯だったというわけではない」
「58歳にもなれば、ずいぶん沢山の知人ががんで亡くなっている」
「どんなにいい人生でも悪い人生でも、人は等しく死ぬ。
それが早いか遅いかだけで一人残らず誰にでも終わりがやってくる」
同世代で、
レベルがあまりにも違うのでおこがましいけれど、
私も「物書き」を生業にしてきたこと。
これを読んで初めて知ったけれど、
実はうちのごく近所に部屋を借りていらしたこと。
(多分、我が家から歩いて7~8分)
猫好きで、「さくら」という猫を病気になる前に亡くしていたこと。
漫画が好きで「きのう何食べた?」や「おやすみカラスまた来てね」の
新刊を楽しみにされていたこと。
さまざまな共通点や共感点がちりばめられており、
心がきゅっと締め付けられるような感覚になった。
山本文緒さんの小説は「プラナリア」くらいしか読んでいなかったけれど、
これから遺された作品を少しずつ読ませていただこうと思う。
最後の長編作品となった「自転しながら公転する」は
めっぽう面白く、ノンストップで読了してしまった。
ちなみにこの本、「闘病記」と呼ぶには少し違和感がある。
なにしろ、診断されたときはすでにステージⅣのb。
ほぼ何の手立てもなく、自らの病を静かに見つめ
(心中はもちろん察しようもないが)
亡くなる9日前までの日々を淡々と、
時にユーモアを交えながら綴ったもの。
「きのう何食べた?」は最近20巻目が出て、安定の面白さですよ。
「おやすみカラスまた来てね」はついに完結しましたよ。
読んで欲しかったなあ・・・