リドヴォーでシャンパーニュ。

ちょっと珍しい病気になってしまったコピーライターの日記です。

会えぬまま2月の空に逝くひとよ

朝、メッセンジャーの着信音が鳴った瞬間に、

「ああ、亡くなったんだな」

と、直感した。

怖くて、30分ほどメッセージを確認できずにいた。

 

若い頃から通っていたお店のマスター。

10歳上だが、大学の先輩にもあたり、

家族のように接してくれていた。

 

私に娘が生まれたときは、まるで孫の誕生を祝うかのように

病院まで駆けつけてくれた。

 

自身のお父様と一緒に始めたカラオケスナックは、

今年で42周年になるという。

ほぼワンオペで、19時の開店から、

お客様が帰るまでエンドレスの営業。

本人は20年以上前から禁煙していたが、

副流煙、毎夜の付き合い酒、過酷な肉体労働。

無理が限界に達したのだろう。

一昨年、小細胞肺がんと診断された。

 

ふつうの肺がんと違って転移が速く、

基本的に手術は難しいと聞いた。

抗がん剤放射線での治療を続けながらも、

相変わらずワンオペでお店に立ち続けた。

その後、食道がんも見つかって手術。

見る影もなく痩せてしまったけど、

最後まで、お客と向き合うことにこだわり続けた。

 

最後の連絡は今月7日のライン。

緊急事態宣言が明けたら、すぐにでもお店を再開したいと。

 

あれからわずか20日足らず。

あまりにも急で、実感がわかない。

 

コロナ禍が続く中で、お別れが叶うのかもわからないが、

今日は、長年お世話になったお店のドアの前に

お花を捧げたいと思っている。

 

会えぬまま2月の空に逝くひとよ 2度と開かない扉に花を