88まで生きるつもりだったのに!!
人生の折り返し記念に買ったもの
44歳の誕生日に、銀座のミキモト本店で真珠のネックレスを買った。
100万円を少し切る、人生で家(と保険)に次ぐ高額の買い物。
クレジットカードの限度額を超えていたので、
お店からカード会社に電話をして交渉し、やっと承認してもらった。
ミキモトの担当者はとても親切でエレガントで、
支払いを終えて帰る私を晴海通りに面する正面玄関まで慇懃に見送ってくれた。
私はそのネックレスを、「人生の折り返し記念品」にするつもりだった。
「折り返す」という考え方は、村上春樹の古い短編小説からいただいたもので、
元水泳選手の主人公が、35歳の誕生日を「人生の折り返し地点」と決めるというもの。
この話を読んだのはかなり前、多分20代の頃だったと思うのだけど、
44歳になるそのとき、ちょうど私の気分にヒットしたのだと思う。
仕事が忙しく収入もそこそこあって、
何か思いきった買い物をしたいという気持ちもあった。
また、ゆくゆくは、40歳のときに生まれた娘に譲れる、ということも背中を押した。
あれから10年ちょっと。人生の残り時間を考えるはめに
そう、あの時の私は、「少なくとも88歳までは生きるつもり」だったのだ。
日本人女性の平均寿命や身内の健康状態に照らせば、楽観的過ぎることもないだろう。
それに、40歳以上の高齢出産経験がある女性は100歳まで生きる可能性が高い、
というデータをどこかで見た記憶もあった。
あれから10年余り経ついま、リアルに自分の死と向き合うことになるとは、
その頃は、いや、つい先週まで予想だにしなかったのだが。