リドヴォーでシャンパーニュ。

ちょっと珍しい病気になってしまったコピーライターの日記です。

コロナ疑惑の3週間。

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3月25日、六義園の枝垂れ桜

手術から2ヶ月、レントゲンは問題なし

 

術後2ヶ月の外来を受診したのは、3月26日のこと。

そのわずか数日後に、国がん病棟勤務の看護師さんに

コロナ陽性が出たと聞いて驚いた。

そういえば外来の時、W先生、マスクもしていなかったなあ。

時節柄、さぞかし厳戒態勢かと想像していたら、

意外にいつも通りだったので拍子抜けしたのであった。

 

「まさかコロナ!?」と怯えた日々

 

そして私自身、この3週間ほど、

コロナ疑惑で自主的に隔離生活を送っていた。

3月17日に鼻水、くしゃみ。

19日に38.3℃の発熱があったものの、

その後は36~37℃前後で落ち着いていた。

 

念のため都の相談窓口に電話してみたところ、

「症状から言って、普通の風邪だと思いますよ。

実際、今のところほとんどの方はそうなので~」と。

しかし、万が一を考えて外出を一切とりやめ、

食事も自室で摂るなど、家族との接触も最小限に。

 

仕事と読書と映画漬けの日々

 

発症から3週間が経過し、家族にも移ることなく症状は軽快。

ちょうど26日の外来でレントゲン撮影を行い、

肺の状態にはまったく問題なかったので一安心。

 

でも、最初の1週間はかなり不安だったなあ。

もしも陽性だったら、すでに誰かに移していたかもしれないし。

 

楽しみにしていた2つの飲み予定をキャンセルし、

自室にこもって仕事をしたり、本や漫画を読みまくる日々。

撮りためていたHDの映画もかなり消化できた。

 

写真は、体調の良い時にぶらりと出かけた六義園の枝垂れ桜。

この数日後に、ここも臨時休園になってしまった・・・

 

いつまで続くのか、この閉塞感。

こんなお宿でリモートワークしたい!「里山十帖」

そうだ、温泉行こう

 

退院から一月半。

手術の傷もだいぶ目立たなくなってきたので、

じんわりと閉塞感漂う東京を抜け出し、

1泊2日の温泉旅へ。

 

ヘルシーな料理と、

『なーんにもしない』を満喫できる宿がいいなーと思っていたところ、

ふと目に入ったのが、「里山十帖」。

www.satoyama-jujo.com

 

かなりの有名宿で、普段はなかなか予約困難らしい。

しかし、幸か不幸かこのコロナ禍でキャンセルが多発、

数日後の予約をとることができた。

 

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部屋からは巻機山を一望

 

越後湯沢はスキーで何度か来ているが、

さらに二駅の「大沢駅」から送迎バスで約5分。

築150年という重厚なレセプション棟を中心とする

なんとも趣のある外観のホテルだ。

 

 別荘感覚の客室、居心地最高

 

到着すると、まずはロビーでウェルカムドリンクと

ケーキ&お漬物のサービス。

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ドリンクはスパークリングワインを選択

 

予約したのは最後の一部屋で、201の「露天風呂付ファミリーメゾネット」。

下階はハンス・J・ウェグナーのソファが置かれたリビングと露天風呂。

上階にベッドルーム&バスルーム。

天然木のロッキングチェアに座って眺める、

日本百名山のひとつ、巻機山の景観も最高。

住むように滞在できる、居心地の良いお部屋。

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北欧風のリビング

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ベッドには2種類の枕が


 

とろっとやわらかな美容液風呂と、滋味深い料理。

 

 

コーヒーで一服してから、客室と同じフロアにある大浴場へ。

露天風呂からは、残雪を纏った山々が一望できて息を飲むほど。

そしてお湯がまたやわらかい・・・

とろみがあって、まるで美容液のような肌触り。

もともとあまり長風呂は好きではなく、さっと10分ほどで上がったのに、

その後いつまでも湯冷めすることなく、

からだがぽかぽかと保温されていた。

 

 

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前菜はさつまいもとじゃがいも

 

 

夕食は1階のダイニング「早苗饗(さなぶり)」の個室で。

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絶妙な和洋折衷の個室でお食事

有機野菜をメインに、旬の魚、ほんの少しの肉を組み合わせた

滋味深い料理の数々。

グリルした野菜に切干大根のソースを合わせたり、

一見「たこ焼き?」と思ったら白子の揚げ物だったり、

1品1品に驚きがあり、

ペアリングのワインや日本酒も絶妙なセレクトで

幸せ過ぎるひととき・・・。

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ぶりのポワレにバジルのソース

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ほうぼうのカルパッチョにいろいろな野菜や香草

 朝ごはんがまた至福

 

今年は雪が少なくスキー場もすでに営業を終了している越後湯沢。

しかしこの夜は夜半から雪が降り出し、

朝起きたら窓の外はすっかり雪国の光景に。

 

朝食は、魚沼コシヒカリの玄米と、各テーブルで仕上げてくれるお味噌汁、

出汁巻き卵やイワシの生姜煮、ご飯がすすむお供の数々。

はああ、眼福&満腹~

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朝食の前菜

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ご飯のお供いろいろ

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この出汁巻きが絶品!



確かにお値段はちょっと張るけど、

また絶対リピートしたい宿。

 

こんな美しい自然に包まれて、滋味深い料理をいただけたら、

「がんにならない生き方」が実践できるかもしれないな。

 

初めての「がん友」に遭遇した夜。

酒とつまみと病気のことと・・・

 

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大塚「まるま」にて

先週末、ちょっと不思議な飲み会に参加した。

 

場所は大塚駅そばの、美味しい日本酒と

それに合うおつまみが楽しめる、雰囲気のいい居酒屋だ。

 

retty.me

 

集ったのは、男女それぞれふたりずつ。

といっても別に合コン(笑)とかではなく、

私にとっては、いわゆる「がん友」との初対面。

 

きっかけは、知人のライター・Nさんが

「実は自分の友人がサバねこ主義さんと同じ病気で、

一昨年手術を受けたんですよ。

もしよかったら一緒に飲んでみませんか?」

と声をかけてくれたこと。

ちょっと不思議な集いではあるが、

滅多に知り合えない「希少がん仲間」とお会いできるチャンス。

喜んでお受けし、デザイナーの友人も誘って出かけたのであった。

 

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あまり見たことのない銘柄が充実

 

腫瘍の大きさ・性質は近いのに、術式はまるで違う!

 

初めてお会いする「胸腺腫仲間」のMさんは、

穏やかな物腰でとても感じの良い人だった。

会社の健康診断のレントゲンで腫瘍が発覚し、

一昨年にK大学病院で手術を受けたそう。

 

Mさんは胸腔鏡ではなく胸骨正中切開で、

腫瘍ごと胸腺や周りの組織も摘出したそうだ。

(私の場合は胸腔鏡手術で、腫瘍のみを摘出)

私より腫瘍は小さめだったのに、手術はかなり大掛かり。

何と、術後の傷の写真や病理診断の結果まで見せてくださった。

正中切開の傷、なるほど、なかなかの迫力!

 

病期(Mさんは0期、私はⅠ期)や

病理診断の結果(AB型)はかなり近しいのに、

手術の手法やアプローチはまったく異なるところが、

「標準治療」が確立されていない希少がんならでは。

 

それにしても、20万人に1人といわれる希少な病気の経験者を

2人も知人に持つNさんは、かなりのレアケース。

おかげで、いろいろな情報や経験をシェアする

貴重な時間を過ごすことができた!

(余談だが、今回のメンバーは仕事でもちょっとしたつながりがある上、

それぞれ多方面に博識かつマニアックなので、

病気話を別にしても、あちこちに会話が転んで楽しい)

 

きっと、乳がんとか肺がんとか

比較的患者数の多い病気にかかっていたら、

患者会など、がん友とつながる機会も多いんだろう。

 

Mさんも私も、胸腺腫の治療は一旦「卒業」したものの、

これからも経過観察、再発への懸念は続く。

情報が少なく、孤独になりがちな希少がん患者が、

もっと気軽に病気について語り合えたらいいのに。

 

今週のお題「卒業」

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刺身盛り合わせ。特に鯨が絶品!

 

「おばあさん」が羨ましかった日々。

 

私が住む街は、東京23区の中でもっとも高齢化が進んだエリア。

つまり、道を歩けば高齢者にあたる。

 

昨年、病気が発覚して手術を受けるまでの間、

散歩や買い物の途上でおばあさんを見るたび、

やけに羨ましくて仕方がなかった。

 

もちろん、別に「孫が欲しい」という話ではなく。

 

人生でもっとも「死」に近づいたとき、

ひしひしと迫ってきたのが、

「私はおばあさんになれないかもしれない」

という怖れの感情だったのだ。

 

術後1ヵ月が経過して、ふと気づいたら

あれだけ羨ましかった「おばあさん」の姿が、

すっかり日常の中に溶け込んでしまっていた。

 

手術が無事終わり、病理検査の結果も出て、

とりあえず、「最悪の想定」は免れたといえるだろう。

 

しかし、危機感は一時より薄らいだものの、

死の気配はいつでもそばにあるような気がする。

 

私が「おばあさん」になれる確率はどのくらいなんだろう?

 

そんなとりとめもないことを考えつつ、

うるう年の今年、2月29日は行きつけのレストランを予約し、

スパークリングワインで乾杯した。

 

次のうるう年に、私は還暦を迎えているはず。

憧れの「おばあさん」に、いつか私はなれるんだろうか。

 

 

 

今週のお題「うるう年」

 

数字に弱いフリーランスは、ホワイトデーに向けてブルーになる。その理由はもちろん…

3月15日に向けて、日に日にブルーになるフリーランサ

 

フリーランスで働く者にとって、

特に、数字に弱く経理作業を大の苦手とするものにとって、

もっとも憂鬱なタスク、それが確定申告。

 

年が明け、クライアントから支払調書が続々と届くようになると、

じわじわと真綿で首を絞められるような、

追い立てられているような気がしてくる。

 

しかも今年は1月末に手術を受け、

仕事やプライベートであれこれと調整が必要だったので、

ますます憂うつに・・・なるかと思っていたら、あら不思議。

案外順調に準備が進められている。

 

この3連休は、1年間 溜め込んだ領収書類の仕分けと経費の計算。

もっとも面倒な作業を大体やり終え、

書類の準備がおおむね終了、先が見えてきた。

 

人間ドックの費用が、医療費控除の対象に

 

 ところで、今年の確定申告では、1つ思いがけないメリットが。

 

人間ドックの費用は基本的に医療控除の対象にならないのだが、

「健康診断等の結果、重大な疾病が発見され、

かつ、その診断等に引き続きその疾病の治療を行った場合には、

その健康診断等は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、

その健康診断等のための費用も医療費控除の対象になります。」

国税庁ホームページより)

 

つまり今回に限って、人間ドックの費用も控除の対象に!

(どうせなら見落としがないようにと、脳ドックやCT、

全身MRIなども含むプランだったので、かなり高額だった)

 

もっとも、日帰り人間ドックでのがん発見率は

胃がん食道がんで0.47%、肺がんに至っては0.035%、だそうで・・・

 

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虎ノ門病院付属健康管理センターホームページより

 

昨年の人間ドックで、20万人に1人の希少がんを発見できた私は、

運が良かったのか、悪かったのか・・・

 

 

「がん保険やめようかな~」と迷っていたら、がんになった話。

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がん保険加入率は30~40%前後

 

がん保険に加入している人って、どのくらいいるんだろう?

ふと気になって調べてみたら、がん保険・がん特約の加入率は、

30代から50代で約40%。

 

保険の基礎知識↓

 

https://kichinto.club/knowledge/cancer/cancer02.html

 

私ががん保険に入ったのは約20年前だが、

この2~3年、「がん保険って本当に必要なんだろうか?」と思うように。

とはいえ、いざ保険をやめたとたんにがんになったりしたら悔しいな、

という逡巡があり、ずるずると保留にしていたのだった。

 

そして昨年、まさかの希少がん「胸腺腫」の疑い。

いろいろあったものの、無事に手術を終え、

発行された診断書を保険会社に発送したのが先週の金曜日(14日)。

 

そして何と、きっちり5日後の19日には給付金が振り込まれた!

 

ヒルのA社は対応が速いとは噂で聞いていたけど、

これは想像以上!

 

がん扱いされるかどうか、微妙な病気だったが・・・

 

私がかかった胸腺腫はちょっと変わった病気で、

「良性と悪性の中間的な腫瘍」といわれる。

特にⅠ期(浸潤なし)の場合は、

保険上はがんとして扱われないことがあると聞いていた。

 

しかし今回は、がん診断一時給付金が満額で支給。

さらに、入院給付金もがん扱いで支給されていた。

 

予想外の臨時収入は確かにうれしいが、よくよく計算してみれば、

今まで払い込んだ保険料をすべて回収できたわけではない。

 

とりあえず、がん保険の必要性は微妙かと・・・

 国立がん研究センターの調査によると、

30歳の人が10年後までにがんに罹患する確率は0.6%、

40歳で2%、50歳で5%。

生涯で2人に1人ががんになるとはいわれるものの、

やはりこの年代ではかなりのレアケースなのだ。

 

国立がん研究センター がん情報サービス↓

 

ganjoho.jp

 

そう考えると、ほとんどの人にとってがん保険

まず元が取れないギャンブルのようなものだとも思える。

(その分、コツコツと貯金しておく方が確実)

 

私の保険も、再発の場合は給付金がおりなくなるようだし、

これを機会にがん保険は解約してもいいのかもしれない。

 

とはいえ、アヒルのA社さんの素早いご対応には本当に感謝しています!

 

 

 

希少がん患者にとって「大切な人」、それは…

今まで縁もゆかりもなかった人が、

突然、「自分にとって一番大切な人」になることがある。

たとえばそれは、自分の命さえも左右するかもしれない人。

 

私の場合、それは「執刀医」だった。

昨年11月に「胸腺腫」という希少がんの疑いを指摘され、

今年1月末に手術を受けるまでの約2ヶ月半。

特に手術日となった1月27日は、

例年流行のインフルエンザに加え、

新型肺炎が日本に上陸したタイミングでもあった。

 

年間250件もの肺がん手術をこなし、

手術まで「100人待ち」という超多忙で凄腕のドクター。

手術日が決まってからは、自分の体調はもちろんのこと、

「先生、風邪ひかないで!インフルに罹らないで~!」と、

祈るような気持ちだった。

 

おかげさまで手術は滞りなく、

いや、想定の斜め上を行く結果に。

大きさが最大5~6センチあると見られていた腫瘍なので、

右の脇を5センチほど切開して取り出すはずが、

完全胸腔鏡下で摘出された。

実際に摘出してみたらさらに大きな7センチ。

なのに切開しなくて済んだため回復も早く、

手術から3日目に退院。

仕事にも即日復帰することができた。

 

私の罹患した病気は希少がんなので、

肺がんや乳がんなどと異なり標準治療が確立していない。

どの医療機関で、どのドクターに治療してもらうかで

大きな違いが出ると思う。

 

同じ病のかたはもちろん、

希少な病気に罹った方は特に、

自分の運命を託すことになるかもしれない

「大切な人」、じっくり、慎重に選んでほしい。

そして、最善の結果にたどり着いて欲しいと、

心から願っている。

 

 

今週のお題「大切な人へ」